よるは、オフィスビルのエントランスで時計を確認した。時刻はすでに午後8時を回っている。残業続きの毎日で疲れてはいたが、心のどこかで今夜の帰りが少し遅くなることを期待している自分がいた。なぜなら、彼女の上司である青山部長が、同じように遅くまで残っていたからだ。
「よる、もう少し手伝ってくれないか?」そんな風に声をかけられる度に、彼の深い声に胸が高鳴る。青山部長は頼れる存在であり、同僚たちの信頼も厚い。その落ち着いた佇まいに、よるは自然と引き寄せられていた。
その日も、オフィスには二人きりだった。静かな空間にキーボードの音だけが響き渡る。集中しているふりをしながらも、彼女の意識は完全に青山部長に向いていた。目の前の仕事が片付いた頃、ふと背後から声が聞こえた。
「よる、もう遅いから帰るか?」
驚いて振り返ると、青山部長がコーヒーを片手に立っていた。彼は少し疲れた顔をしていたが、その目はどこか優しげで、彼女を気遣うような視線を送っていた。
「すみません、まだ少しだけ…でも、もうすぐ終わります。」
「そんなに無理をしなくてもいいんだよ。でも、頑張ってる君を見てると、俺もつい頼りたくなる。」
その言葉に、よるはドキリとした。上司と部下の関係以上の何かを感じさせる、その優しい口調に、彼女の胸はさらに高鳴った。思い切って、彼に少し甘えてみようと決心した。
「部長、もしよかったら…少し飲みに行きませんか?お礼も兼ねて。」
青山部長は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに微笑んで頷いた。「いいね、たまには仕事以外の話もしよう。」
二人はオフィスを後にし、近くのバーに向かった。静かなカウンターに座り、よるは軽く息をついた。普段は真面目な話ばかりしている青山部長と、こんなふうに二人きりで過ごす時間は初めてだった。
「こんなに遅くまで仕事をしてくれる部下がいるのは、本当にありがたいよ。」青山部長はグラスを軽く傾けながら、柔らかな視線でよるを見つめた。
「いえ、私こそ部長に色々助けてもらってますから…」
そう言いながらも、よるの心はすでに高ぶっていた。彼とこんなに近くで話しているだけで、彼女の胸の鼓動は止まらない。
その後、会話はスムーズに進み、二人の距離は少しずつ縮まっていった。やがて、青山部長は優しく彼女の肩に手を置き、「君とはもっと色んな話をしたい。仕事以外のこともね。」とささやいた。
よるは顔を赤らめながら、彼の視線を受け止めた。その瞬間、二人の間にあった境界が崩れ去った。彼はゆっくりと彼女に近づき、唇が重なった。優しくも情熱的なそのキスに、よるは全てを委ねていた。
「よる、君のことが気になって仕方ないんだ。」彼の低い声が耳元で響く。
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